- 交感神経の異常な活性化
多汗症の主な原因は、自律神経の一部である「交感神経」が過剰に活動することです。通常、体温調整のために汗が出ますが、交感神経が必要以上に刺激されることで、暑くも運動もしていないのに汗が過剰に分泌されます。
- 遺伝的要因
原発性局所多汗症は、家族内で同じ症状を持つ人が多いことから、遺伝的背景が関与していると考えられています。はっきりとした遺伝形式は不明ですが、家族に患者がいる場合、発症リスクが高まるとされています。
- 精神的ストレス・緊張
緊張、不安、恐怖などの精神的な刺激は、交感神経を活性化しやすく、精神性発汗を引き起こします。人前に出る場面や重要な試験、面接などで、手汗や脇汗が異常に多くなることがあります。
- ホルモンバランスの変化
思春期、更年期、妊娠中など、ホルモンバランスが大きく変化する時期には、発汗機能も不安定になりやすく、多汗症が発症または悪化することがあります。
- 気温・湿度などの環境要因
高温多湿の環境では、体温を下げるために汗腺が活発になり、汗が増えるのは正常な反応です。ただし、多汗症の場合は、通常よりも過敏に反応して、必要以上に大量の汗が出る傾向があります。
- 特定の基礎疾患による続発性多汗症
何らかの病気が原因で起こる続発性多汗症もあります。代表的なものは以下の通りです。
・甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
・糖尿病
・結核や感染症
・悪性腫瘍(リンパ腫など)
・脳・脊髄疾患
これらの場合、汗のかき方が全身性だったり、突然発症したりするため、注意が必要です。
- 薬剤の副作用
一部の薬(抗うつ薬、血糖降下薬、鎮痛薬など)は副作用として多汗を引き起こすことがあります。新しく薬を飲み始めた後に汗の異常が出た場合は、副作用の可能性も考えられます。
- 肥満や運動不足
肥満により体表面積が増えると、体温調節のために発汗が促進されることがあります。また、運動不足による代謝低下も、汗腺のコントロール異常に関係する場合があります。
- 自律神経失調症
自律神経のバランスが崩れると、汗のコントロールが乱れることがあります。過度なストレス、不規則な生活、睡眠不足などが誘因となり、自律神経失調症を介して多汗症が発症または悪化するケースもあります。
- 原因が特定できない場合もある(特発性)
原発性局所多汗症では、明確な原因が特定できないことが多いです。この場合、「特発性」と呼ばれ、個人の体質や神経系の微妙なバランスの違いによるものと推測されます。
このように、多汗症の原因は「交感神経の異常」や「遺伝的要素」が中心ですが、病気や薬剤、副作用によるものも含めて多岐にわたります。